テクノロジーと専門家と一般人

謎なタイトルですが、今日の話題はこれでいきます。

最近それなりに社会インフラ化の基礎が固まりつつある仮想通貨界隈において、先週末に日本の有名な仮想通貨取引所の一つであるコインチェック社でアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨の総称)の一つであるNEMが流出するという事件がありました。

ネットニュースをチラチラと見ていると、コインチェック社の会見に参加していた各メディア担当者の仮想通貨に関する知識が足りなすぎるとか、質問の的がズレまくっているというような批判のコメントを目にしたり、はたまたメディアがあらゆる分野に精通している人材を確保するのは無理なので仕方ないというような擁護コメントも目にします。

1.テクノロジーの進化はとても早い

何も新しい考え方ではないですが、いつの時代でもテクノロジーの進化は早いです。停滞=後退と言えるほどに、世界はどんどん変わっていきます。

但し、今はコンピュータの処理速度やそれらを繋ぐネットワークの回線速度が十分に上がってきたことで、ただでさえ早い進化が、コンピュータの力を使うことでさらに加速度的に早くなっていると思います。

仮想通貨の世界を支えるブロックチェーン技術も、サトシナカモトさんが発表した理論を見た人が「面白いから実際に作ってみよう」と考えて実現されたものですが、仮に10年20年前にサトシナカモトさんがいて発表していたとしても、それを実現するためのインフラが脆弱なのでここまで普及せず、物好きの自己満足で終わっていたかもしれないですし、理論自体が夢物語として忘れ去られていったかもしれません。

2.テクノロジーが世界の垣根を取り払う

古くはインターネットから始まり、ブログや各種SNS等の普及によって、人々があたかも隣人と世間話をするのと同じような手軽さで、地球の裏側の人ともコミュニケーションができるようになりました。昔なら百科事典をひっくり返して探してももしかしたらわからなかったようなことも、ちょこっとインターネットの世界に出ていけば世界中のナレッジに触れることができて、ほぼ解決できます。

同じように、先ほどのブロックチェーンの話のように誰かが何かいいアイデアを思いついても、その人やその人の知人にそれを実現するためのスキルがある人がいなかったりしたら、そのアイデアは埋もれてしまっていました。でも今なら簡単に世界中から協力者を募ることが可能です。昔より圧倒的に日の目を見るアイデアが増え、それらが世界中の協力者のもとでどんどん実現し、研ぎ澄まされていきます。

3.すべてに詳しい、なんて不可能

このように、あちらこちらでいろいろなアイデアが生まれ、いいアイデアには世界中の素晴らしい知能が結集して研ぎ澄まされていくような世界において、たった一人の人間、あるいはたかがイチ企業、イチ業界が、何にでも詳しいなんてことはありえません。ですので、冒頭の会見の話で言えば、どちらかと言うと私は「メディアが業界のプロに対して鋭い質問をぶつけるのは無理難題だ」という立場です。もちろん、個人個人で見ればそれが可能な人もいるとは思いますが。

4.専門家と一般人の乖離が広がっている

なんか、ようやくタイトルっぽい話が出てきましたね。

つまり、今の世の中は「アイデアの量」も「研ぎ澄まされたアイデアの質」もどちらも以前とは比べ物にならないくらい多くて高く、それが日々加速度的に広がっているような状況です。つまり、あるジャンルの話を全く知らない人が少し見聞きしたりカジった程度では全然本質を理解できないようなジャンルがどんどん世の中にあふれてきているのです。そして、この最先端とビギナーの乖離は、困ったことにそれを媒介する人にも高度なスキルを要求することになります。

例えば、Yahoo!の記事へのコメント欄で、オーサーのコメントに対して突っ込みが入っているのを最近よく見ます。これは、最先端がはるかに遠くて複雑すぎることで、一般人よりはそのジャンルに長く身を置いているような人であっても、本質を正しく理解できておらずに的外れな説明をしてしまっているのです。もちろん、意図的にポジショントークをするような人も中にはいると思いますが。

問題は、一般人はそのオーサーのコメントが正しいことなのか的外れなことなのかを簡単には見極められないところにあります。なぜなら、あまりにも最先端が遠すぎるから。

5.興味があるなら、飛び込んでみるしかない

昔からあるようなジャンル、業界の話であれば別かもしれないですが、少なくとも仮想通貨のようにここ数年で新しく出てきて急成長してきたような考え方やテクノロジーに関しては、誰かに説明してもらったり、ただ調べたりしているだけでは、おそらく正しい理解にはたどり着けません。よほど運が良かったりいい人脈を持っていたりして、最先端を正しく理解したうえで一般人の間を媒介できるような人物やレポート等に出会えたりすれば可能かもしれないですが。

なので、興味があったり知りたいと思うことがあったら「とにかく自分でやってみる」のが今の世の中ではとても重要なことではないかと思います。他人の言っていることは、相当の確率で間違っている可能性が高いと認識すべきです。それは意図的に嘘をついているのではなく、その他人自身も正しく理解できていないのです。もちろん、自分がやってみることで正しい理解ができるかどうかもわかりませんが、少なくともそれ以外のどの方法よりも正解への近道になるハズです。

ホリエモンの著書で「多動力」というものがあり、それなりに売れているようです。私は特段ホリエモンが好きとか嫌いとかはないのですが、twitterなどを見ていると、今の世の中を生きていく上で参考になる考え方を結構発信しているように感じます。「多動力」を読んではいませんが、想像するに「とにかくやってみろ」というのが趣旨なのではないかと思っています。同じですね。

6.「そもそも不正が行えないこと」がこれからのテクノロジー

このように最先端が加速度的に進化する世界において「どこかの第三者が不正を監視して正す」のはおそらくほぼ機能しないです。当初はうまくいっても、時間が経つにつれて監視している者と最先端がどんどん離れていってしまうからです。ただ、不正が跋扈するようなテクノロジーは結局どこかで自滅していくので、生き残っていくことはできません。

そこで、これから生き残っていくテクノロジーに必要なのは「どこかの誰かに監視」をしてもらわなくても、そもそもそのテクノロジーを使っていくにあたって不正ができない、あるいは不正が行われたらそれがすぐに広く検知され正されるようなものである必要があります。

どこかで聞いたような仕組みですね(笑)そう、ブロックチェーン技術はまさにそんなコンセプトで生まれたテクノロジーです。

まだ成熟したテクノロジーではないですから、コインチェックの件などがきっかけでこれからも問題が顕在化してくることもあるでしょうが、このコンセプトをもったテクノロジーである限りにおいて、今の世の中で生き残っていく資格をもったテクノロジーであることは間違いないと思います。現に、今回のコインチェック問題自体はイチ取引所がしっかりとしたセキュリティ対策をとっていなかったために起こったことですが、ブロックチェーン業界ではこれをきっかけに、発生した不正を検知して実質無害化するための進化が起ころうとしています。腐敗していく余地がないテクノロジーが今後は生き残っていくはずです。

というところで、私はこのブロックチェーン技術の世界は、飛び込んで追いかけていく価値があるものだと考えています。たまたま今身近な例がこれだったので、ブロックチェーンの話を中心に書きましたが、どんなものであってもこれから必ず備えているべきものは「不正ができない仕組み」ですね。

コインチェックの件は内部犯行ではないかなどという疑いもあるようで、実際どうなのかは明らかになるかもしれないですしならないかもしれません。でも理想的な姿は、そもそも不正をしようがない(不正をしたところで意味がない)テクノロジーのもとで商売をしているのだから、誰かに監視されたり追及されたりするまでもなく、どの業者も当たり前のように誠実な商売が行われることですね。

7.メディアの会見の是非

これはあとがきみたいなものですが、冒頭に書いたようなコインチェックの会見で本質的な質問ができないメディアはいらない、という意見について。

もしかしたら今回の件の質問コーナーについてはその通りであるかもしれないですが、メディアには広く伝えるという役割もありますので、本質を突いた鋭い質問ができなかったとしても、それなりの会見の必要性はあるとは思います。質問コーナーでは、メディアの質問の後でもいいので、例えば官公庁などが新しいことをするときに募集するパブリックコメントのようにSNS等を使って広く質問を集め、それなりの専門家がその中から有益な質問を選別してぶつける、といったようなことができたらいいかもしれないですね。ただ、その選別に恣意性が紛れ込んでしまう恐れがあるのでなかなか難しいと思いますが。

誰か、不正が入る余地がなく、恣意性が入らず適切な質問だけをピックアップできるような新しいテクノロジーを考えてください(笑)

 

書き始めてから結構日数が経ってしまったので、タイムリーに投稿はできなかったですが、なんだかんだこのブログの趣旨に沿った記事の第一号になりましたかねー。本当は第一号は別の話題で書いていたのですが、そっちはまだ下書き状態で眠っておりますー。いつか日の目を見るのだろうか。

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